福岡藩士のお盆の食べ物

福岡城の日々

今年のお盆(月遅れ盆)はいかがお過ごしですか?
お盆と言っても、時代、地域、宗派、家庭によってさまざまな過ごし方や習慣があるようですね。
そもそも時期や期間も地域で異なり、福岡に引っ越してきた際に、お盆が8月13日~8月15日であること(16日ではなく15日に終了すること)にとても驚いた記憶があります。
また、この時期に福岡のスーパーマーケット等で見かける、タラ胃の干物にもその様相に驚かされます。最初はお盆の食べ物とは認識できず、お盆の魔除けの飾りかと誤解したくらいです。

時をさかのぼって江戸時代、お盆は旧暦7月の行事でした。当時の福岡藩士の皆さんはどのような食べ物でお盆を過ごし、ご先祖様をお迎えしたのでしょう。(以下、料理名の表記は原文ママです。)

「林家年中行事定録」(万延元年1860年の作成と推定される)によりますと、

7月13日 黒さゝけ・煮干御備
7月14日 餅・黒さゝけあゑ 砂糖無し
香ノもの丼盛
四つ半時 御霊具
 指身(はす芋 こんにやく 海老 かにみそ)
 にしめ 揚豆ふ あらめ
 御汁お椀
 御食
西瓜
にふめん 椎たけ 茄子 みやうかのはな
7月15日 蓮葉・強飯土器盛御備
蓮葉・強飯・刺鯖・敷紙三方飾付
四つ半時 御膳
 にしめ 揚とふふ 茄子
 御汁小菜
 香の物 長さゝけ
 御食
御膳過ぎ 饅頭
昼過ぎ 切麦
白たんこ
ひゆ和へもの
粟之飯

とあります。
ちなみに林家の祖は林直利、黒田二十四騎の一人で、上級武士の家柄です。
何だか美味しそうでおなかが空いてきますね。

そしてこちらは「鎌田家年中行事幷万積り帳」(作成時期不明)。

7月13日 そうめん
7月14日 りやうぐ
たんご
りやうぐ
7月15日 りやうぐ
甘酒
りやうぐ
たんご

鎌田家は中級武士にあたり、こちらは「りやうぐ」(今でいう霊供膳・精進料理だと思われます)の内容が記されていないので分かりませんが、とりあえず甘酒が美味しそうです。

※「林家年中行事定録」にある刺鯖とは、江戸時代、一般的に盆に食べられていた、贈答品としても非常に人気のあったサバの干物のことです。「鎌田家年中行事幷万積り帳」のほうには、「そうめん・さば直(値)段高直(値)ニ候ハゝ無用之事」とあり、鎌田家の方は大層堅実な様子が伺えますね。

残暑まだまだ厳しい折です。どうぞ熱中症等お気をつけて、出来るだけ涼しくお過ごし下さい。城内散策される際には、途中で水分補給が出来るように、飲み物を持ってお出かけ下さい。

8月15日は終戦記念日でもあります。福岡城跡は太平洋戦争終了まで軍の駐屯地があった歴史もあります。「福岡聯隊の跡」の碑もございますので、散策される際には是非ご覧になってください。

参考資料:福岡市史『資料編 近世2 家臣とくらし』

 

 

 

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