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鴻臚館の月の詩の話

福岡城の日々 2022年12月14日(水)
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皆さん、先月の満月、皆既月食を覚えていらっしゃいますか?
周りに高い建物がない、空が大きく開ける鴻臚館広場で、
天体ショーを楽しんだ方も多かったようです。
あれから早くもひと月を過ぎ、ぐっと寒くなりました。

今から遡ること1184年前(西暦838年:承和5年)、
鴻臚館上空の冬の月を、天下の奇才、小野篁(オノノタカムラ)が
詠んでいたと思われる漢詩が、平安時代の漢詩集「扶桑集」に残されています。

(2022/11/8鴻臚館広場で撮影)

難しい漢字が並んでいますが、
「どんなに遠く離れていても/きっと君たちは今/同じ冬の月を見ている」
…なんて解釈したら、やっぱりあんまりスイートすぎるでしょうか?

西暦834年、承和の遣唐使団の遣唐副使に任命され、すったもんだが いろいろあった末に、
迎えた838年の7月。
小野篁は、船が博多津を出港するその際に、乗船拒否して任務を放棄することになります。

(遣唐使船の模型:鴻臚館跡展示館蔵)

そしてこの頃、
沈道古という名の唐人が鴻臚館に滞在し、篁と詩を詠み合ったという記録があり、
その沈道古と、先ほどの引用の漢詩の題にある沈卅が、
同一人物ではないかと考えられるそうですよ。

同年年末、小野篁の隠岐への流刑が決まりましたが、一年程で刑は解かれます。
無事に都に帰還を果たした後、やがて再び華々しく返り咲き。
スーパーヒーロー、不沈の篁ですね。
篁の漢字がキョウとも読めるので、野篁じゃなくて野狂だなんて
こっそり人から呼ばれることもあったようで、
なんだかとてもワイルド&クレイジーな人柄だったようです。

鴻臚館は当初、筑紫館(ツクシノムロツミ)と呼ばれていましたが、
時代が下って(おそらくは弘仁年間:810年-824年)に「鴻臚館」と名称を替えました。
先ほど触れました、篁と沈道古が詩を唱和したという「日本文徳天皇実録」の記録が、
「大宰鴻臚舘」という言葉の初出になっています。

DSC_1378

(鴻臚館跡展示館の展示パネル)

鴻臚館跡展示館のパネルの文の一行の中に、
小野篁とヒキガエルが、仲良く月夜にかくれんぼしていました。なんて思うだけで楽しいですね。

歴史を探しにどうぞ気軽に、鴻臚館跡展示館へ遊びに来てくださいね。
同展示館は、年末年始を除いて年中無休(12/29~1/3がお休みです)、
営業時間は9:00~17:00(入館は16:30まで)になります。

そして、鴻臚館広場から仰ぐ広い空は、夜だけでなく昼間もとても素敵ですよ。

 

参考図書
「国風暗黒時代の文学 中 (上)―弘仁期の文学を中心として」小島憲之(塙書房)(1973)
「扶桑集―校本と索引―」田坂順子(櫂歌書房)(1985)
「発見100年記念特別展よみがえれ!鴻臚館 行き交う人々と唐物」(鴻臚館跡発掘30周年記念特別展実行委員会)(2017)
「小野篁 その生涯と伝説」繁田信一(教育評論社)(2020)